Appleがどん底だったころ
iPhoneをキッカケに、ちょうど10年くらい前のことをぼんやりと考えるようになった。
そんなとき、別件でちとSoftware Designのことを調べていたら、昔よく読んでいて好きだった「Kyleのシリコンバレー通信」のバックナンバーが掲載されていることを発見した。初回がちょうどAppleがNeXTを買収する直前、96年秋からはじまっていて、売り上げはともかくとして、Appleが将来のビジョンを失いかけていたどん底の季節で、いったいどういうことが起こっていたのかを思い起こさせる。
http://www.gihyo.co.jp/magazine/SD/kyle/se4.html
この時代においても、OpenDocやCyberdogがあったりと決して革新的な技術がなかったわけではないのだが、当時のMacOSにいわば基礎体力が欠けていたことは、ある程度OSを知っている人の間では共通見解だったと思う(だからキライだったというわけでもなく、ぼくは大学で毎日、UnixワークステーションだけではなくMacをいじっていたわけだが)。だから、AppleによるNeXTの買収とJobsの復帰がきまったときには興奮せざるを得なかった。その興奮と(当時のユーザにとっての)不安は、以下のエントリによく示されている。
http://www.gihyo.co.jp/magazine/SD/kyle/se6.html
http://www.gihyo.co.jp/magazine/SD/kyle/se8.html
結局のところ、Rhapsodyは99年までずれこんだし、MacOSXに至っては2001年3月、実質的な完成形と言える10.1は2001年9月なのでほぼ5年かかったことになる。その間のとても苦しい時期を、iMacで乗り切ったAppleはやはり奇跡的な会社なのだろう。
http://finance.yahoo.com/q/bc?s=AAPL&t=my&l=on&z=m&q=l&c=
株価を見ると、iMacにより息を吹き返し、その神通力が切れた後の厳しい時期に、今度はMacOSXとiPodが投入されたことがわかる。わたしがプライベートでMac(iBook late2001)を手に入れることを決断したのは、iPodとMacOSX10.1がきっかけなので、なんだか妙な符合を感じるのである。
それにしても、Jobsが復帰してからのAppleに大きな方向性のズレがみられず今に至ってることには改めて感嘆せざるを得ない。短期的に狙うのはシェアというよりもあくまでも財務の安定と安心感、長期的にはインフラストラクチャの整備とビジョンの共有、その中で何年に1回かは必ず道しるべになるような象徴的な製品を出す。