ドラッグ&ドロップという思想(1)

http://blog.livedoor.jp/lalha/archives/50158572.html

「安定しているしていない」は、環境によるのでスルー。MacでもWinでも、不安定な環境は不思議なことにどこかには存在する。自分に関しては、もう何台もMacを乗り換えてるけど、自ら壊しちゃったとき以外に不安定になったことはあんまり記憶にないですけどね。OSX以降はね!ま、アップデートのときにiTunesのレポジトリが消されたこともあるので、全く安全だとは言わないけど。一方、Windowsも、そう不安定になったことはない。……こともないが、まあ2k以降ならMacと大差はない(ウィルスとスパイウェアにさえ出逢わなければ)。ラーメンズのCMも、MacOS9の頃はよく爆弾が出ましたよねアナタ、とニヤニヤ鑑賞するのが正解。

もひとつのファイルダイアログにサムネールが無いという話も、たしかに事実なのだ。現行のMacOSXのファイルダイアログの機能が、WindowsXPより少ない機能しか持ってないという。ファイルダイアログといいFinderといい、OSXの初期から根本的な進歩はしていないので、そろそろ大幅なリファインが必要だというのはMacOSXウォッチャーの中ではほぼ共通の見解になっているのではないだろうか(だから、PathFinderみたいなサードパーティの製品にチャンスがまだ残っているという話でもあるのだが)。っていうか、写真アップロードするならiPhotoから.macに書き出すかiWeb使うか、はたまたPicasaプラグイン使ってワンクリックで共有じゃね?という話もあるのだが、ここではあくまでmixiの話になっているので、ブラウザからのアップロードに話を限ろう。

この記事のコメント欄にすでに指摘があるのだけど、dragdropuploadという機能拡張を使うと、この問題はほぼ解決してしまう。もちろん、標準機能じゃないからイッパンジンには使えないかもしれない。なのだが、それはそれとして、なんでこういう機能拡張が出てくるのかという所に実は大きな意識のギャップがあるのだ。だってこれは、ダイアログを拡張するという機能拡張ではないのだから、ドラッグ&ドロップを使うのだという考え方が前提にないと、そもそもこの機能を使おうなんて思わないよね。だから、実はここがポイント。

わたしも、Macを常用するようになったのは実のところこの3〜4年でしかない。Macにほぼ全面的にswitchしたのは、10.3のタイミングだ(それくらいexposeが印象的な機能だったというのもあるのだけれども、それはともかく)。だから、この人が感じたような使いにくさは、かつて自分が感じていたものに似ている、と思った。んでもって、この記事によって、WinとMacを併用すること1年で意識の根本的な転回があったということを思い出したのでした。「それ」に気がつかないと、Macは使いにくい、って思っちゃうかもしれない。

それはなにかというと、WinとMacの間に横たわるインタフェース原理(というほどのものではもはや無いかもしれないが)の違いなのです。この両者、一見おなじよーなマルチウィンドウベースのOSに見えながら、操作体系に関しては根本的な哲学の違いがある(かつてのMacOSはもっと大きな違いがあったけど、OSXになってギャップが埋まった部分があるだけに、余計に際立っちゃうような)。だから、Winの上で、あるやり方でベンリに使えている部分は、Macで同じような操作を期待すると使いにくく感じてしまう。実は同じ機能に対して全く別の考え方がアサインされていたりして、そっちを使えばよかったりする。

その一つが、上のdragdropuploadで拡張されるところの、「ドラッグ&ドロップ」という考え方なのだ。これは、Windowsでももちろん存在する機能なのだが、Macとはちょっと使い勝手が違う機能の一つでもある。Windowsで、ダイアログ/メニュー->選択、という動作を行う場合、Macの場合は、ドラッグ&ドロップが代替機能だったりする。アップロードしたいとき、ダウンロードしたいとき、ファイルのコピーをしたいとき、配置したいとき、ドラッグ&ドロップすればなんとかなるというのがMacの目指している姿なのだ(たぶん)。MacOSXだとWin流儀のメニューがいっぱい増えたのでそうは感じないかもしれないけど、実はそうなのだ。それに気がつくと、OSに対する見え方が変わってくる。Macが、ドラッグ&ドロップをどのように使えるように実装していて、それに対してWindowsはどうなのか。

だいたいにおいて、Windowsにおいてドラッグ&ドロップは地雷もいいところな機能なのだ。なにせ、ドライブをまたいだときのデフォルト挙動が違う。同じドライブなら移動で、違うドライブならコピー。時折ショートカットの作成になったりもする。こんなわけのわからない機能は無視するに限る(とかつてのワタシは思った。だいたいWindowsでドラッグ&ドロップなんて使わないっしょ)。対して、Macの場合はまあ比較的一貫している。ドライブをまたぐなんてのは無いし、ブラウザからでもiPhotoからでもエディタからでも、とりあえず選択してドラッグ&ドロップ出来る(ことを目指しているように見える)。

つまり、OSには見た目がカッコイイとかそういう部分じゃない、考え方の違いみたいなものがある。Windows使ってるなら、ファイルをがーっと選択してから「送る」とか「コピー」を使ったり、ファイルダイアログのいろんな機能を使ったり、キーボードショートカットを多用したり、はたまたFileVisorでさくさくコピったりするのがベンリだ。Mac使ってるならFinderのWindowをいくつか開いておいて、またエディタを開いておいて、さくさくドラッグ&ドロップでハッピーライフ。ブラウザからばーっと出ている写真を落とすのも、ドラッグ&ドロップでちゃきちゃき落としたり、dragdropuploadでiPhotoからさくさくうpるのもいい(もちろんSafariStandを使ってハッピーになってもいい)。それぞれのOSにはそれぞれの流儀があって、それに沿ったときに一番使いやすくなるもんだし、実はどっちのOSにもいろいろな拡張があってそれを使ったらやっぱりもっとベンリになる。そしてMacにはexposeがあるからぼくはMacを使う。結局exposeかよって話はあるけどね!

とまあ、ダラダラ書いてきたわけだが、結論はつまんない平凡なこと。一つのOSに最適化された操作が他のOSで使えないから、そのOSが使いにくい、というわけではない。これは、MacユーザがWinを使うときも、WinユーザがMacを使うときも、どっちの場合でも陥りがちな罠なんだけどね。慣れた環境の使いにくい点は段々使わなくなっちゃうから気がつけないし、使いやすい点は他の環境で使えないとストレス直結するので、結果的には住めばどこだって都になっちゃうわけだけど、OSのユーザビリティを語るならそこはカッコに入れないといけない。そうじゃないと、やっぱりウチはいいねえ、とか旅行帰りの人がいうような面白みのない話になっちゃうよね。

(07/25-26補足)MacOSXでもバーティションを作成したりディスクを増設すれば、ディスクをまたぐときのドラッグ&ドロップのデフォルト挙動は変わる。ディスクをまたぐときはコピーで、ディスクをまたがないときは移動というのは、ファイルシステムをまたぐ場合、実装的には正しい。ファイルシステムをまたぐなら、位置の「移動」は出来なくて、「移動」はファイルは「コピー」して「削除」してるだけだからね。しかしながら、直感的に何故そうなるかわかりにくい。計算機的に「移動」と「コピー」のどちらが自然かは、ディスク内のオペレーションとディスクをまたぐ場合のオペレーションで変わってしまう。これは仕組みを分かってないと理解できない「自然」なのだ。とはいえ、ディスクをまたぐ場合の「移動」が「コピー」と「削除」から成り立っている以上、これをデフォルトの振る舞いにするのは危険でもある。ここに、二つの「自然」(ユーザとしての「自然」と計算機としての「自然」)がぶつかりあっている典型的な例を見いだせる。Windowsがプリインストールされているマシンの場合、歴史的経緯で最初からパーティションが切られているケースが多いことが多いので、この振る舞いにあいやすい。これは、ユーザビリティ上、いいことではないと考えている。